今回の買取品は、シャネル ココマーク グリポア風カラーストーン ゴールドカラーロングネックレス です。
太いゴールドカラーのチェーンに、大きなココマークと深紅のカラーストーンを組み合わせた、ひと目で印象に残るネックレス。
現在のシャネルにも受け継がれている華やかさを備えながら、どこか歴史ある装飾品を思わせる重厚な雰囲気があります。
シャネルのアクセサリーに詳しくない方でも、このネックレスからは「特別な存在感」を感じられるのではないでしょうか。
細部をたどっていくと、シャネルが長年大切にしてきた美意識も見えてきます。
赤いカラーストーンとゴールドカラー
まず目を引くのは、ハートのような丸みを帯びたモチーフです。
その中央には、深みのある赤いカラーストーンが据えられています。
石の表面はなめらかに盛り上がったカボション型です。
光が当たると内部に明るい赤が浮かび、見る角度によって黒に近い深紅にも見えます。
周囲のゴールド部分には、渦巻きや小さな粒を組み合わせた細かな装飾が施されています。
均一に整いすぎていないところも、このネックレスの魅力です。
古いヨーロッパの工芸品や、ビザンチン時代の宝飾品を思わせる味わいがあります。
カラーストーンの上には、シャネルを代表するココマークが置かれています。
ココマークにも同じような装飾が入り、ハート形のモチーフと自然な一体感があります。
身に着けたときの動きまで考えられている
それぞれのパーツは蝶番のような金具で連結されているため、身に着けたときに体の動きに合わせて揺れます。
見た目の華やかさだけでなく、着用時の動きまで考えられた作りです。
チェーンには、丸みのある太めのリンクが使われています。
繊細さを前面に出すネックレスというより、装いの中心になるアクセサリーといえるでしょう。
シンプルな黒いワンピースやニットに合わせるだけでも、シャネルらしいスタイルが生まれます。
女性の服装を大きく変えたシャネルの歴史
シャネルを創業したガブリエル・シャネルは、1883年にフランスで生まれました。
「ココ・シャネル」は通称、本名はガブリエル・ボヌール・シャネルです。
シャネルの歩みは、1910年にパリで開いた帽子店から始まりました。
その後、フランスの保養地であるドーヴィルやビアリッツにも店を構え、帽子だけでなく洋服も手がけるようになります。
当時の女性服は、体を締め付けるコルセットや、動きにくい重いドレスが主流でした。
ガブリエル・シャネルは、男性用衣料に使われていたジャージー素材などを取り入れ、体を無理に締め付けない服を提案します。
女性服に自由な動きを実現した
装飾を重ねることが高級と考えられていた時代に、シャネルが選んだのは、線がすっきりした実用的な服でした。
しかし、単に簡素にしたのではなく、女性が自由に動けることと、美しく見えることを両立させた点に新しさがありました。
1918年には、現在もシャネルの本店が置かれているパリ・カンボン通り31番地へ進出。
1921年には香水「シャネル N°5」を発表します。
黒を日常のファッションに取り入れたリトルブラックドレス、ツイードのスーツ、キルティングバッグなど、後の時代に残る数々のスタイルを生み出しました。
第二次世界大戦の影響で一時は服作りから離れましたが、1954年、70歳を過ぎてファッション界へ復帰します。
流行が変わっても、動きやすさと上品さを大切にする姿勢は変わりませんでした。
ガブリエル・シャネル亡き後も受け継がれる美意識
ガブリエル・シャネルが亡くなった後も、その美意識はメゾンに受け継がれます。
1983年にカール・ラガーフェルドがデザイナーに就任すると、ツイードやチェーン、カメリア、ココマークといった伝統的な要素を大胆に再構成しました。
ヴィンテージシャネルのアクセサリーに大きなココマークや太いチェーンが多く見られるのは、こうした歴史とも無関係ではありません。
昔から続くデザインでありながら、身に着けると不思議なほど現代的に見える。
それがシャネルの強さです。
ココマークは何を表しているのか
向かい合う2つの「C」を重ねたココマークは、世界でも特によく知られたブランドマークのひとつです。
一般には、「Coco Chanel」の2つの頭文字を組み合わせたものと受け止められていますが、実は諸説あります。
ひとつは、ガブリエル・シャネルが幼少期を過ごしたオーバジーヌ修道院のステンドグラスにあった曲線模様から着想したという説。
別の説は、南フランスのシャトー・ド・クレマにあった紋章がもとになっているというもの。
また、フランス王妃カトリーヌ・ド・メディシスが使った組み文字との関係を挙げる説もあります。
どれも興味深い話ですが、現在のところ「これが唯一の由来」と断定できるものではありません。
由来が一つに定まらないことも、ココマークをめぐる物語の奥深さにつながっています。
確かなのは、左右を向いた2つのCが重なることで、非常に均整の取れた図形になっていることです。
小さく使ってもブランドが伝わり、大きく使えば装飾そのものになります。
今回のネックレスでは、ココマークは深紅のモチーフとチェーンをつなぐ、デザインの主役のひとつです。
表面には細かな凹凸が刻まれ、一般的な平らなココマークとは異なるクラシカルな表情を見せています。
「グリポア」とは何か
このネックレスの品名に含まれる「グリポア」。
グリポアとは、宝石の種類ではなく、フランスのガラス工房「メゾン・グリポア」の名前です。
1869年、パリでオーギュスティーヌ・グリポアによって創設されました。
同工房が得意としたのは、溶かした色ガラスを型や金属の枠へ流し込む「パート・ド・ヴェール」と呼ばれる技法です。
カットガラスのように硬く鋭く輝くのではなく、色が内側からにじむような、やわらかな光を生み出します。
手作業による味わい
一つひとつ手作業で作られるため、わずかな気泡や色むら、形の違いが見られる場合があります。
こうした不均一さは、光の入り方や色の重なりに個性を与え、グリポアならではの味わいになります。
メゾン・グリポアは、シャネルをはじめとするフランスのオートクチュールメゾンにガラス装飾を提供しました。
ニューヨークのメトロポリタン美術館にも、シュザンヌ・グリポアがシャネルのために制作した1930年代後半のネックレスが収蔵されています。
本物の宝石でなくても、美しくてよい
ガブリエル・シャネルは、模造真珠や色ガラス、金色の金属を使ったコスチュームジュエリーを積極的にファッションへ取り入れました。
それまでの宝飾品は、使われている金や宝石の価値が重視される傾向にありました。
シャネルは、素材の希少性だけでなく、服との組み合わせやデザインを楽しむことにも価値を持たせました。
本物の宝石と模造石をあえて一緒に着けたり、何本ものネックレスを重ねたりする装いも、シャネルらしい発想です。
宝石の価格に服装を合わせるのではなく、自分が美しいと感じるものを自由に身に着ける。その考え方は、当時としては大胆でした。
今回のネックレスも、まさに「装うためのジュエリー」です。
ルビーのような雰囲気を持つ深紅の石。金色の装飾と赤い光が組み合わさることで、一つの完成したデザインになっています。
裏側の刻印とネックレスの状態
ココマークの裏側には、楕円形のプレートが取り付けられています。
画像では「CHANEL」「MADE IN FRANCE」と、著作権・登録商標を示す記号が読み取れます。
刻印はブランドや製造地を知る手がかりになりますが、刻印だけで真贋や年代を決めることはできません。
プレートの形、文字の並び、接合部分、チェーンや留め具の作りなどもあわせて判断します。
画像を見る限り、表面や裏面には細かな擦れ、色の変化、ゴールドカラーの薄れが見られます。
特にココマークの裏側や縁の部分には、長年使われてきたことを感じさせる摩耗があります。
ヴィンテージアクセサリーでは、新品のように磨き上げることが最善とは限りません。
強い研磨剤や薬品を使うと、残っている金色の仕上げまで落としてしまうことがあります。
お手入れは乾いた柔らかい布で軽く拭く程度にとどめ、湿気や直射日光を避けて保管するのが安心です。
時代を重ねても古びない、シャネルらしい一点
このネックレスの魅力は、ココマークが大きいことだけではありません。
太いチェーン、浮き彫りのような金色の装飾、深紅のカラーストーン。
それぞれに強い個性がありながら、全体にはまとまりがあります。
華やかでありながら、単なる派手さでは終わっていません。
天然の宝石や貴金属だけを価値の基準にせず、色や形、身に着けたときの美しさを楽しむ。
そこには、ガブリエル・シャネルが広めたコスチュームジュエリーの考え方がよく表れています。
深紅の石に光が差したときの色合い、細かな装飾が生む陰影、動くたびに揺れるココマーク。
写真からでも存在感は十分に感じられますが、実際に手に取ると、さらに多くの発見がありそうなネックレスです。
ココシャネルらしいと言えるアクセサリーを買い取らせていただきました。ありがとうございました。